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東京高等裁判所 昭和56年(ラ)1109号 決定

主文

本件抗告を却下する。

理由

本件抗告は、執行裁判所が「抗告状に執行抗告の理由の記載がなく、かつ、抗告状を提出した日から一週間以内に執行抗告の理由書が提出されなかつた。」ことを理由として民事執行法一〇条五項に基づいてなした執行抗告却下決定に対する執行抗告であるが、本件抗告状には、単に「原決定に不服があるので抗告を申し立てる。抗告の理由は追つて提出する。」旨記載されているのみであり、現在に至るも抗告の理由書は提出されていない。

ところで、執行裁判所が民事執行法一〇条五項に基づきなした執行抗告却下決定に対する執行抗告が同じく同条項に該当するとき、再度これを執行裁判所において却下すべきものとすれば、更に該却下決定に対して執行抗告が申し立てられることが予想され、かくては執行抗告の申立てとこれに対する却下決定が際限なく繰り返されることとなりかねないから、執行抗告却下決定に対する執行抗告は、執行抗告の理由書の提出の有無にかかわらず、抗告裁判所において処理すべきものと解するのが相当である。しかしながら、右は執行抗告の申立てとこれに対する却下決定の反復という事態を回避する見地からなされる措置にすぎないから、執行抗告却下決定に対する執行抗告についても、他の執行抗告と同様に、民事執行法一〇条三、四項の規定が適用されるのであり、これに反する執行抗告は抗告裁判所において却下すべきものであるところ、本件抗告状に抗告理由の記載がなく、かつ、抗告状提出の日から一週間以内に抗告理由書が提出されなかつたことは前記のとおりである。

よつて、本件抗告を却下することとし、主文のとおり決定する。

(蕪山厳 浅香恒久 安國種彦)

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